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2008-07

子燕

「これは・・・交換した方がいいですね」

「やっぱり・・・ダメですか」

「バッテリー全然反応しないですかねぇ」

 

車のエンジンをかけようとしたら、
セルが回らなかった。

で、20年以上会員でいるJAFに救援を求めたのだが、
車検を取るとき指摘された通り、バッテリーの寿命を宣告されてしまった。

 

「どうします?
 新品がございますけど、交換しますか?」

「それはもう・・・お願いします。」

 

これで、23000円の出費となる。

が・・・・
仕方がない(・_・、)

何時でも動かせるようでないと、
車を所有する意味は無いのだ。

 

JAFのサービスマンには、
暑い中の作業に対するせめてもの気持ちで、
水のペットボトルを差し入れ、仕方なく作業を見ている事にする。

 

しかし・・・暑い(^_^;

こんな日は、沖縄のように鳥もヘロヘロしているんじゃないか・・・と
何となく駐車場の木立を見ていると、電線に留まった小鳥が見える。

 

あれ?
なんか・・・マジ、ふらふらしてるぞ??

何だか、電線に掴まるのが精一杯な感じのその鳥は、
近づいても逃げる事さえしない。

よく見てみると、
尻尾が短く、クチバシもまだ少し黄色く見えて、
とにかく身体が小さい。

羽の形からして、どうやら燕の子供のようだが・・・・。

 

「まだかかりますから、
 車の中でエアコンかけて乗っていてください」

「ありがとうございます。」

 

JAFのサービスマンが、汗だくな私を見て声をかけてくれたのだが、
そんな事はできるワケが無いし、しかも今は、この燕が気になっているのだ。

 

あ・・・
羽を広げたな?

あら、閉じちゃった・・・・

飛ぶのが恐いのか・・・な?

お?
また羽を広げた・・・・・

 

何度か燕は、羽を広げたり羽ばたく真似をするのだが、
その足は電線を掴んだまま、固まっている。

で、そのうちに気がついた。

燕に向かって風が吹いた時に限り、
燕は羽を広げる・・・という事に(^_^;)

 

ちょっと早く、
飛び立っちゃったんだねぇ・・・

もしかしたら、
巣で、そうやって羽ばたく練習してるうちに落ちた?

でも、勇気を持って飛ばないと、
ずっとそこに居るしかないよ?

飛ぶ事を怖がる子燕を見ていて、
動きたいのに動けない自分の姿を見るような気さえ、してくる。

 

ガンバレ!
立派な羽を持っているのだから。

大丈夫だよ、飛び出せば。

・・と、その時、一際強い向かい風が吹いた。

 

行け!
今だ!!

飛ぶんだ!!

 

子燕は、今までで一番大きく羽を広げ、
パタパタと羽ばたいた。

 

あ?
どうした?

なんと・・・
その子燕は、飛ぶ事を諦めてしまったようで、
羽を綺麗に畳んでしまった。

 

あらら・・
今のは飛べたんじゃないの??

・・・と思った瞬間、子燕は電線からダイブした。

 

必死に羽ばたき、
風に翻弄されながらも飛んでいく。

うん
最初から、そうやってダイブすれば良かったじゃん・・・

と心の中で呟いたが、
ふっと思う。

自分も、ああやって動かないでいる事・・・・
結構、有るな、と。

 

「お待たせしました。
 一度エンジン止めて、もう一回かけてくれますか?」

「はい。」

 

一度エンジンを切ってセルを回すと、
ついぞ聞いた事が無いほど元気にセルモーターが回り、
次の瞬間、あっけなくエンジンが再スタートした。

 

あの子燕のダイブを見るために、
エンジンが動かなかったのかな・・・と、ちょっとだけ思う。

 

どうやら
今の私に必要なのは、
とにかく飛ぶ・・・・事、らしい(^_^)

ほんの少しだけ

いつもいつも、
先の先まで考えて動く君は、
その思いが伝わらない事を嘆いていたよね。

言葉が通じなくても、
ほんの少しでも、その思いが伝わるなら報われる・・・と
悲しい目をして呟いていたよね。

君がどれだけの愛情を持って頑張っているか、
私は知っているから、
見放す・・・とか、切り捨てる・・・とかは思わずに、
その愛情を少しだけ自分に向けてみたら、どうだろう。

 

嫌なヤツ、馬鹿なヤツ、脳天気なヤツ、浅はかなヤツ、
そんな言葉が当てはまってしまうような人間と関わるのは辛いし、
自分にとっては害しかない・・とわかっていても、
浮き世の義理はそれを許さない。

だから、区別してそんなヤツを眺めながら、
独り相撲をとっている間抜けな姿を嘲笑しつつも、
それでも穏やかな愛情を持って相手をする。

そんな毎日を私も送っているけど、
自分の気持ちや言葉で自分を傷つけないように・・・と
なるべく自分に言い聞かせるようにしているよ。

 

自分の抱えている問題は、
自分以外の人にとっては関係の無い事。

その問題を、極一部分でも分かち合う事で苦しみを和らげてくれる人は、
生き方や言葉、価値観や世界観を分かち合える、特別な人。

そしてそこには愛情がある事を、
私は知っているし感謝している。

 

ほんの少しだけ、
楽に考える事、やってみようよ。

一歩退いて、
眺めてみようよ。

もしかしたら・・・
違う物が見えるかも知れない、からね。

視点を変えると

「F3ハーフとマイスターです」

「ゴメン、カウンターのソッチで叫ぶだけじゃわかんない。
 この状況見て、伝票整理してよ。」

「はい、すみません」

「あっちでオーダー取るばっかりで、
 せっかく注いだビールを取りに来ない連中、動かしてよ」

「はい、すみません」

 

とある、ビール会社が経営している店に入っていた。

もの凄く暑くて、誰もが冷房の効いた部屋でビールでも・・・と思うのだろう。
店は、想像以上に混んでいて、空いているカウンターに通されるまでに、
20分以上かかっていた。

カウンターの奥では、店長という名札とソムリエバッジをつけた男性が、
6つのビールサーバーを操り、ワインセラーからはワインを選んでカラフェに注いで、
紙パックのウーロン茶とオレンジジュースをグラスに注ぎながら、
さらに洗い場に走ってグラスを洗い・・・

要するに、1人でドリンク全てを作っていたのだが、
どう見ても店内には100人程度の客がいて、
そのオーダーがどんどん入ってきてしまっているようだ。

もう、無理・・・
という表情とオーラを感じて、とにかく頭を下げ笑顔を作っていた男性は、
胸に副店長という名札をつけていたが、とにかく彼もレジと客誘導をこなしつつ、
さらに若いスタッフに指示を出す・・という仕事をしている。

 

「もうさぁ、
 そこで叫ぶ前に、ここに入って少しは手伝ってくれって感じだよ。
 もう、無理・・・」

「はい、すみません」

 

カウンターに座ってると、こういうやり取りが直に聞こえてしまう。

いつもなら、店長の嘆きにも似た怒りの声に、こっちも不快になるのだが、
明らかに可哀想な状況が見える事と、神業のようにドリンクを作っていく職人芸に、
実は内心感心さえしていたのだ。

 

「A6あがったよ〜取りに来て!
 で、こいつがC2・・・あれ?」

「え・・と、違いますねぇ
 あ、D1です、こっちの分ですね」

「頼むから、伝票整理してくれよ。」

「店長、私入ります」

 

胸にマークの入ったベストを着た女性が、
カウンターの中に入った。

そのビールの注ぎ方はキリッとしていて、頼もしい。
店長にもちょっとだけ安堵の色が顔に浮かぶ。

最近感じるのは、若い女性がしっかりしている事。

同年代の男性に比べて遙かに能力が高く、
良くも悪くも大人である・・と感じる事が多い。

 

「おまたせしました、ブラウマイスターです」

「大変だねぇ」

「申し訳ありません、ドタバタして」

 

ビールをサーブしてくれたのは、副店長だ。

 

「今日は正規のスタッフじゃなくて、慣れておりませんで、
 ご迷惑おかけしました。」

「いやいや、神業を見せていただいて、
 感心しましたよ」

 

ほんの一杯のビールを飲むために寄った店で、
今時珍しい心遣いと、職人ワザを目の当たりにする。

コストの為にスタッフが少ないのか・・と思ったが、
夏休とかの関係とか諸々あってのドタバタであった事もわかり、
働く人の気持ちを先に想像してしまう自分は、
以前よりは他人にも優しくなれているのかな・・・と、思ったりもする。

 

見ず知らずの他人に冷たい今の都会、
自分の辛さをアピールするより、
苦しんでいるかも知れない・・と想像できる自分でありたい、と、
なんとなく思った。

 

それにしても、
クソ暑い日には、生ビールが美味すぎる(^_^;)

必然

今年は、今までフィルムで撮っていた物で、
再撮しないと心残りになりそうな物を撮りたい・・と強く思っている。

で、相変わらずスチールの仕事も入ってくるので、
身体を労る事を忘れると動けなくなる事もわかってきた。

ケミカルな薬には頼りたくないが、
気付いたら漢方が2種類、ケミカルが5種類の薬を飲んでいる。

効いているのかどうか・・は、
血液検査をすればそれなりに効果がある事も見えるが、
自分にとってはあまり変わらない毎日で、
笑い飛ばしてないと、精神的にも追い込まれそうで恐くもある。

だから・・・
という部分も正直言えばあるのだが、
心残りの無い活動をしたい、という気持ちが強く起きるのだろう。

 

で、直近は、
8月6日、広島の夜を撮りたいと考えている。

何故か縁のある広島だが、
納得できる撮影ができてない。

今の自分が切り取る風景を、
どうしても・・・という衝動が強いので、
きっと行かなくてはいけないのだろう。

 

行動も現象も必然だ。

今、できる事を精一杯。
無理はしないけど、怠けない。

そうやって今まで生きてきたから、
これからもそうやって生きていく。

その気持ちが、きっと写り込むだろう。

生きている証

どうやら人生においては、
良い事も悪い事もそれなりにバランスが取れている・・と
なんとなく気付いてから随分になるが、
ここのところまた、悪い事が襲ってきているようで、元気が無い。

元々、大きな期待はしないし、
棚ぼた・・・なんて事は有り得ない人生だし、
良いと思える事は自分自身で確実に手に入れた「何か」だけ・・・
という現実を嫌ってほど知っているから、「あぁ・・またか」と思うだけなんだけど。
 

それでもここ数年は辛い事と嬉しい事のバランスが、
どっちかと言えば少しだけ嬉しい事が多かったから、
悪い方向へ向かうのはわかってはいて、今更驚く事も狼狽える事もない。

 

「勤め」も「役目」も、できるだけの事はする。
壊れた身体は、受け入れつつ労りつつ使えるだけ使う。

孤独を感じる時は飲んだくれ、不運に泣く時は諦めて受け入れ、
日々、生きていられる事に感謝しながら、笑って過ごそう・・と思う。

 

来年、1月に、
今まで撮ってきた写真を集めて、
写真展を開こうと考えている。

ページで公開してきた写真や、放送で使った写真、
そしてこれから撮っていく物も入れて、1つの形にする。

風景が中心となるだろうけど、
最近撮るようになった人物写真も交えて、
どんな世界を見て生きてきたか、表現できたら面白いと思っている。

だから、へこたれてはいられないワケで(^_^;

 

苦しいのも、痛いのも、
寂しいのも、悲しいのも、
生きている証拠。

それがあるから、
幸せを強く感じられる。

どうせ何も持っていなかったし、
今さら失うモノなんて何も無いのだから、
些細な何かがあるたびに喜んできたし、幸せを感じてきた。

そんな、自分にとっては「当たり前な事」に気付くのは、
まだまだ生きていかなくっちゃ・・と思っているから、だろうね。

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