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2007-02

ロイヤル・ロッホナガー

「仕事に一区切りがついて新たな仕事が始まる記念に,
 何か特別なモルトを飲みたいんだけど?」
 
「特別のですか・・・」
 
「ありそうで無いヤツ。
 優しくて,一杯飲めただけで幸せになれる・・・」
 
「難しいですね。
 アイラとかスペイサイドとかの好みはございますか?」
 
「特に・・・
 でも,アイラじゃなくてハイランドかスペイサイドかな」
 
「例えば,あれを飲みたかったけど・・という物が,過去ございましたか?」
 
「そりゃ,たくさんあるけど・・・
 ここなら,若くて手の届かなかったモルトが・・あった」
 
「じゃ,それにしましょう。」
 
 
そんなやりとりをバーテンダーとしたのは1ヶ月以上前の事。
 
そして私が頼んだのは,
まだモルト馬鹿になりきれていなかった時代に手が出なかったモルトで・・・
 
ロイヤル・ロッホナガー セレクテッド・リザーブ
 
だった。
 
 
「入ってますよ」
 
「お? よくあったねぇ」
 
「元々数が少ないので,オーダーしないと来ませんでした」
 
「そうなんだ・・・」
 
 
普通のロッホナガーやレアモルトシリーズのロッホナガーは見る事もあるが,
セレクテッド・リザーブはここ数年見た事がなかった。
 
高価である事と人気の無い(というか知られていない?)せいで,
販売店でも仕入れないのだろう。
 
もちろん私も,この酒を飲む事は,初めてだ。
 
 
ヒュミドールにしようかな・・・と思う位綺麗な木箱に入ったそれは
開けずにとっておきたいほどの魅力を携えて微笑んでいる。
 
もちろん口を開けないなんて馬鹿な事ができるわけもなく,
記念すべき初めての会話を楽しむ事にした。
 
 
濃い琥珀色。
 
香りは甘く,グラスの周り50センチ以上にその存在をアピールする。
 
まずは一口・・・
 
キックは思ったより強く,濃い味わいの中にハイランドらしい・・
と言うかスコッチらしい個性を見せる。
 
最初の味わいは,ダルウィニー15年かホワイトラベルのアンシェスターのようだ。
 
そしてじっくり時間をかけていくと・・・
 
15分でまず鼻を差すような刺激的な香りが飛び,
さっきまでよく磨かれた家具のような固さを帯びた感触が,
上質な毛布のような柔らかさに変化している事に気が付いた。
 
有りすぎる・・と思ったボディも適度な太さに変化し,
最初はきっちり着付けされた和服の女性だったようなこいつが,
いつの間にか浴衣に着替えているような錯覚さえ感じる。
 
そして30分を過ぎ,45分を迎えようとする頃,
さらに大きな変化が訪れた。
 
最初は少し柑橘系の甘さを持っていたロッホナガーだったが,
上質な蜂蜜,すこし焦げた砂糖を入れすぎたトースト,
そして何かの花の花粉・・・
 
勿論,複雑で楽しい味わいだけが変化じゃない。
 
一番驚かされたのは,その柔らかさだ。
 
どこまでどこまでも柔らかく,
それこそカシミアのような柔らかさと気持ちよさがある。
 
口に含んでから飲み干すまでの間に,
するする・・・と広がって柔らかい味わいがどんどん広がって,
いつまでも余韻を持ったままゆっくりと消えていく・・
 
恐れ入った・・・
と言うか,さすがは王室。
 
こんな美味い酒を当たり前に飲んでるのか・・・(^_^;)
 
 
久々のファーストコンタクト
 
その出会いがあまりに感動的であったから,かも知れないが,
やっぱりこうやって出会いを重ねていかないと,人生はつまらない。
 
最近の酒は美味くない・・と決めつけないで,
これからも馬鹿道まっしぐら・・で突っ走るしかない
と思った夜だった(/–)/

大人げない

いつものようにモルト馬鹿1号と2号は,最近不定期開催の壁の会を開催した。
 
気持ちよくスタートを天空のバーで行ってから
2階の定位置に移動したら,そこにはちょい悪オヤジを気取るナイスミドルが占領中。
 
もちろん「どけ!」なんて無粋な事は言いません。
 
楽しい酒席は皆で分かち合う物で,
久々に友達と飲む事の方が大事なんですが・・・
 
そのオヤジは「なんだコノヤロー目線」をいきなりくれた。
 
 
普段はち~っとも腹が立たない目線ではあるが,
若かったら間違いなく次はボディコンタクトが始まる位のキツイやつだ。
 
既に酒が入ってる私には,穏やかに受け流す余裕が失われつつあった。
 
と,その頃,もう1人のモルト馬鹿の横の客は,ウンチクをこねながら,
プチ壁を自慢する嫌なヤツだったらしい。
 
 
「あのさ,今日は壁の日なんだから,久々に出したいんだけど」
 
「一応バーテンダーに聞いてからね」
 
「すいませ~ん,今日壁の日なんで全部出してもらっていい?」
 
「いいですよ」
 
 
受け答えをしてくれたのは,
まだカウンターに立つようになって間が無いルーキーだった。
 
そう・・・
 
最近,自分達のボトルを全部(推定40本?)出すのは認められていない二人にとって,
その言葉は悪戯心を大いに刺激する一言になってしまったのだ。
 
 
「今,出して良いって,言ったね?」
 
「えぇ」
 
「ここで全部出して・・・と言うと,皆『ダメです』って言うんだよ?」
 
「大丈夫です。」
 
 
馬鹿二人は顔を見合わせて,大笑いをした。
 
 
「んじゃ,よろしくお願いします。」
 
「はい」
 
 
革のジャケットにごま塩になった髪をリーゼント風にまとめ,
ちょっと斜めになった眼鏡をかけ,たくさんのつまみを前に並べた隣のオヤジは
ビールをチェイサーにバーボンをショットで煽る・・というスタイルを作っていて,
煙草の煙をわざとこっちに吐きながら挑発するような目線をさらに投げつけた。
 
面倒くさいな・・・
 
とりあえず,この店ではそれなりの常連客なんだと,
理解していただこう・・・
 
とことん酒好きだと解ったら,
ケンカの売りようも無いだろうし・・ねぇ(-_-;)
 
 
サイドバッグからコヒーバのロブストを出し,
ボトルが並ぶを眺めながら,点火する。
 
そんな私を見て,ショットグラスバーボンを眺めるだけのオヤジは,
さらに「なんだこの小僧」という顔をして見せたが・・・
 
バックバーのキャビネットからボトル山ほど出てくるに従い,
段々顔の向きが変わっていった。
 
 
「こんなにあったっけ?
 あ・・でも,まだ出てないのがあるな」
 
「えぇ,あとアドベッグが3本とブランデーが2本・・」
 
「ナジェーナもあるだろ?」
 
「あ,あります,あと2ショット分くらい残ってます。」
 
「何だよ,まだナジェーナ持ってるのかよ?」
 
「あぁ,愛知の友人が来たらスィートデビルとアイリッシュコーヒーを飲ますために,
 キープしてあるのさ」
 
「ふ~ん。
 で,俺のはまだ出てないけど,本当に出すの?」
 
「・・・失礼しました」
 
 
悪戯が過ぎました(爆)
 
結局彼の分と私の分を合わせて20本程度にボトルを整理し,
久方ぶりの壁気分を味合わせていただいた。
 
 
ふっと気付くと,さっきまで偉そうにバーテンダーを呼びつけて,
文句を付けつつバーボンを注がせるオヤジはすっかり静かになり,
反対側の兄さんも連れに酒のウンチクを語るの控えてしまったようだ(^_^;)
 
 
これで静かにモルトを愛でる事ができる(^_^)
 
 
バーは酒を愛で,楽しむ所。
 
酒は楽しさの幅を広げ,
悲しみを少しだけ和らげてくれる妙薬だ。
 
競争や格好付けは無粋でしかないのだから,
隣の客がどんな客でも気にしないで飲めば良い。
 
 
「なんかさぁ・・ロックで飲んで楽しい酒は無い?」
 
「今,フェアでニッカの鶴17年がありますけど,オススメです。」
 
 
もう1人の馬鹿が悪い癖を出す。
 
本当に酒には目の無い二人だから,
飲んだ事の無い酒を勧められるとつい・・・飲みたくなってしまうのだ。
 
で・・・
彼の前には,綺麗な白い陶器ボトルが置かれてしまう・・・
 
 
最近まで熟成年が記入されていなかった鶴に,
わざわざ17年と入れる辺りにニッカの意地を感じたので,
ちょっとだけご相伴にあずかったら・・・
 
スッゲー美味いじゃん(^_^)
 
ニッカ,見直しました(マジ)
 
 
 
美味しい酒が飲める事が,やっぱり幸せなんだなぁ・・・
と思った夜,
散々に酔った後でやっと「大人げない事をした」と反省した(/–)/

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