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2005-12

ヘーゼルバーン

キャンベルタウンモルトと言えば、「スプリングバンク」
 
スプリングバンクは、麦芽を全て自分のところでフロアモルティングする珍しい蒸留所で
初溜釜は石炭での直焚きする製法が独特の個性を作り上げている。
 
薫り高きこのモルトの兄弟としてリリースされているのが「ロングロウ」だが、
その味わいはピートが強いアイラにも似た個性と、2回蒸留の作り方から生まれるボディの厚みやオイリーさが
飲み応え有る逸品としてモルト馬鹿の心をくすぐるのは周知の事実だ。
 
そんな中リリースされたのが「ヘーゼルバーン」だが、
これはローランドモルトと同じ3回蒸留でしかもピートを一切炊かない製法で作られている。
 
 
「ヘーゼルバーンがあるんですけど、飲まれます?」
 
「めずらしいね」
 
「3回蒸留なんで優しいかもしれないですけど」
 
「飲んだ事ないから、飲むでしょ。」
 
 
ケルティッククロス ヘーゼルバーン1997 7年 46%
 
 
3回蒸留というわりには力強いキックがあり、
最初のうちは舌の根本にピリピリとした刺激が伴う若き酒独特の個性がある。
 
いつも通り時間をかけていくと、その冷たい反応は徐々に和らぎ、
柔らかく穏やかな顔を見せだした。
 
 
「ロングロウとはうって変わった酒だね」
 
「自分の所で全部やれちゃう蒸留所ならでは挑戦、という感じですね」
 
「スコッチモルト販売って珍しいね」
 
「自社で樽買いして詰めてるようですが、結構良い酒があるんですよ」
 
「そこに並んでるのは・・・多いね(^_^)」
 
「えぇ、後でたっぷりと出しますから」
 
 
30分を過ぎた頃から、ナッツのような香りとちょっとスパイシーなアクセントが強くなり、
甘さはほどほどに口の中を刺激するようになってきた。
 
 
「結構、いいかも」
 
 
「じゃこちらはどうですか?
 レダイグの1992なんですけど・・・」
 
「これまた珍しい」
 
「若い割には、良いですよ。
 でも、順番逆かも・・・」
 
「若いモルトでマトモと聞けば、飲まずにはいられない」
 
 
失敗した(^_^;)
 
確かに順番が逆で、ヘーゼルバーンにくらべると個性に乏しく
ただ優しいモルトにしか感じられないレダイグ。
 
しかし、97年や92年の酒として飲んでみれば、
どちらもかなりの素晴らしさがあって、ちゃんと探せば美味しいモルトも
まだまだあるんだな・・・と嬉しくなる。
 
 
「あの・・・81年のブローラがあるんでけど。
 シェリー樽ですが」
 
「え?早く言ってよ」
 
 
こうやって馬鹿の夜は更けていく(/–)/

ヴォーヌ・ロマネ

ブルゴーニュのヴォーヌ・ロマネ村とジュブレ・シャンベルタン村は、
代表的なワインの産地と言っていい。
 
そのヴォーヌ・ロマネ村は、ふざけるな・・と言いたくなるほど高いワイン
「ロマネ・コンティ」を生み出す村、と言えば、ワインを知らない人でも名前くらい聞いた事があると思う。
 
昨晩の打ち上げの時、実はそのヴォーヌ・ロマネという村名ワインを
こっそりと開けてほんの少しずつ皆に振る舞った。
 
 
「え?」
「何コレ?」
「これが赤?」
「うめぇ・・・」
 
 
ワインと聞いただけでそっぽを向く人達は置いておいて、
興味を示した人達は異口同音に絶賛する。
 
そりゃ、そうだ。
なんたってこのワインは、神様アンリ・ジャイエの畑で
甥のエマニュエル・ルジェが作ったワインなのだ。
 
もちろん、一級畑のクロパラントゥーなんて代物じゃないが、
それでも半端じゃなく美味しいのは確約された物。
 
ピノ・ノワールという葡萄を使ったワインとしては世界で1番美味しいと言っていいくらいの
村名ワインの中でも、別格扱いの代物だ。
 
今回飲んだのは
「ヴォーヌ・ロマネ」2002 エマニュエル・ルジェ
 
日頃当たり前に「ラ・ターシュ」やら「リシュブール」あたりを飲んでいる人にとっては
平凡な味に感じるかも知れないが、
間違いなくごく普通の人が飲んだら美味しいと感じる1本だと思う。
 
勿論、ちゃんとしたブルゴーニュグラスが用意できるわけではないが、
それなりの大きめのグラス(ボルドータイプ)を用意したところ、
特にワインが好きな人達が若干集まってコソコソとワイン談義が始まってしまった。
 
 
「思ったよりも、複雑だしプラム・・・ナッツ・・・もあるかなぁ」
 
「フランボワーズ? 革までいかないけど樽の香り・・・」
 
「いやぁ・・・美味いなぁ・・」
 
 
ブルゴーニュは開くのに時間がかかるが、2002だとさらに若さもあるため
やっぱりモルトと同じで1時間位はかけたい物。
 
それなのに、とにかく美味しくてついつい舐めてしまって、
開ききるまで置いておけなかったりする(爆)
 
クリスマスにとっておきの一本を飲もうと考えている人には、
このルジェの「ヴォーヌ・ロマネ」がオススメだ。
 
値段?
多分1万5千円以下で買えるはず。
 
しかし・・・・
ワインって美味しいけど、マジに高いなぁ(/–)/

マッカラン1978

「来たんだって」
 
「来てます」
 
「何これ?
 派手な箱だね・・・」
 
 
マッカラン1978 ラムウッド・フィニッシュ (ダグラス・レイン)55.4%
 
 
実は、ダグラス・レインのマッカランには、1度手痛い失敗にあっている。
 
50%に加水調整されたOMCシリーズのマッカランを飲んだ事があるのだが、
これがシェリーウッド・フィニッシュではなかったため、まるでマッカランの味がしなかったのだ。
 
で、それ以来、バーボン樽などのシェリー以外の樽でフィニッシュしたマッカランについては
手を出さないようにしていたのだが・・・・
 
これが、オールド&レアシリーズとなると、ちょっとばかり事情は変わってくる。
何故なら、ダグラス・レインのこのシリーズは、1本として外れがないのだ。
 
で、本当は、1977のマッカランが欲しかったのだが、新シリーズの1978が手に入る・・という事で、
ラムウッドに不安を感じつつもオーダーしていた。
 
 
口開けは・・・
眠り込んでいる酒らしく、刺激臭が立ち舌を刺すような味わいがあり、
香りは殆ど奥行きもなく平板で・・・・
 
失敗?
という不安が過る。
 
 
「すいません、76年のマッカランも注いでくれない?」
 
「キングスバリーの?」
 
「そう」
 
 
シェリー樽で熟成した28年物は、76年のオフィシャル18年物とほぼ同じ味わいを持っていて
このモルトを比べるには少しばかり分が悪いかもしれない。
 
が・・・
この高価な酒が失敗だったら、オールド&レアに対する認識を変えなくてはいけないので
とにかく一緒に並べて飲んでみたくなったのだ。
 
 
30分で、少しだけ柔らかく変化し、刺激臭は消え去ったが、
奥行きは出てこない。
 
45分で・・・滑らかさが出て、いきなり軽い酒のような振る舞いを見せ・・・
 
60分を超える頃に、やっとラムの持つ甘さや奥に隠れるスパイシーな香りが、
ジワジワと現れては姿を変えて消えていくようになる。
 
面白い物で、キングスバリーの28年は、最初は抜群に美味しいのだが、
段々と優しく柔らかく変化しつつ、同時に弱くなっていくので、
比べてみると1時間後の味わいではダグラス・レインの方が遥かに豊なのだ。
 
 
「あの・・・、実は運がよければ、1977も手に入るかも知れませんが?」
 
「知れませんが?って、オーダーするかって?」
 
「はい」
 
「もともと1977が欲しかったんだし、頼むでしょ」
 
「わかりました。」
 
 
解ってるって。
2005年リリースの1977マッカラン(オールド&レア)が今流れ出した事は。
 
で・・・・
何時来るんだろうねぇ(/–)/

グレン・モレンジ1971

「なんかモレンジの美味いやつないですか?」
 
「古め?」
 
「そう」
 
「ちょっと高くなっちゃうけど・・・
 1971がありますよ」
 
「え?
 飲みたい」
 
「じゃ、持ってきますね」
 
 
最近は、古いのをサラッと出す店が減って、
こうやって在庫を探りながら掘り出し物を見つけるのが楽しみになってきた。
 
 
「すいません、後、シェリーはありますか?」
 
「はい。
 何にしましょう?」
 
「何があります?」
 
「ドライ、フィノ、オロロソ、クリーム・・ですね」
 
「じゃ、オロロソを」
 
「しかし、力業ですねぇ」
 
「気持ちいいでしょ?」
 
 
その店では、既に馬鹿と認識されているので、
こういった無茶苦茶なオーダーにも軽い突っ込みをくれる。
 
 
「お待たせです。」
 
「え?
 これ?
 口空いてないじゃん」
 
「えぇ」
 
「いいんですか?」
 
「もちろん」
 
 
久々に木箱入りのモレンジを見た。
 
出来の良い物にビンテージを付けて出すプレミアムモルトで、
オフィシャル物ながら個性がハッキリしていて美味しい物だ。
 
ただ、最近この手のモレンジはめっきり姿を消し、
私にしても久々の再会・・といったところ。
 
嬉しさを隠しきれずに、口開けの一口を楽しむと・・・・
やっぱり、思いっきり爆睡中。
 
という事で、しっかりと時間をかけて飲んでみる。
 
加水されたタイプなので軽く感じるが、
モレンジらしいバニラ香は薄く、しかし奥行きの広さは先が見えないほどで、
少し枯れた感じが気持ちよさに繋がるような味わいがある。
 
 
「いい・・・・」
 
 
と思わず、独り言。
 
 
「でしょ?」
 
 
とマスター。
 
滅茶苦茶に混んでいる店内で、自分の廻りだけが妙に静かに感じられるほど、
味わいに集中できる、不思議な感覚さえ訪れる。
 
 
古い物が良いと言わないように・・・とは思っていても、
こうして良いモルトに出会ってしまうと、考え込んでしまう。
 
やっぱり70年代以前のモルトは美味いじゃん・・・と(^_^;
 
味の作り方も飲み方も違う時代の作品が、今に残れるだけの力持っているのではなく、
長生きできる凄いモルトだけが残っているから当然の事だが、
それでもやっぱり味わいに余裕を求めるような意志が、明確に込められているように思えてならない。
 
ただ・・・
最近、ほんの一杯につもりで飛び込む店に隠された在庫が、
妙に自分の好みに合う事が多くなってきたのは、何故だろう・・(/–)/

寒い夜には

「死にそうにさみゅい・・ので、暖まるものを」
「バンショー・・とかできる?」
 
「バンショーはできませんが、ホット・バタード・ラムとかでしたらお造りできます。」
 
「あ、それで、お湯じゃなくてホットミルクで・・」
 
「ホット・ラム・カウ・・ですね」
 
「はい」
「じゃ、俺も」
 
 
いきなり冷え込んできた夜、
ちょっと街を歩いただけで芯から冷え込んでしまった私達は、
ビール好きのクセに、一杯目にビールを飲む事ができなかった。
 
いつもならこんな時は、アイリッシュコーヒーかバンショー(ホットワイン)にするのだが、
マスターのお薦めに忘れかけていた味が蘇る。
 
ホットミルクにラムの組合せは、ケーキのような味わいを作り出し、
身体の芯をゆっくり優しく暖める効果は満点だ。
 
 
「ウィスキーにして、『ホット・カウボーイ』にします?」
 
「あはは、いくらウィスキーが好きでも、そこまではいきません。
 ちゃんとしたモルトはニートでゆっくり飲むのが一番。」
 
「じゃぁ、アベラワーの80年代オールドボトルがありますから、
 そちらを注いでおきましょうか?」
 
「いいですねぇ・・・」
 
 
「スリーマティーニ」
 045-664ー4833
 横浜市中区山下町28番地ライオンズプラザ山下公園104
 17:00~27:00 無休
 
 
この店には、信じられない酒が隠れている。
 
平気な顔をして、第二次世界大戦前の酒とかが出てくるので、
予算度外視でつい酒を飲んでしまいたくなる誘惑に満ちている。
 
しかもそんなレアな酒は、当然の如くそれなりの値段。
 
調子にのって何倍も飲むとかなりの価格になってしまうので・・・・
毎度、3杯位飲んで帰るようにしている。
 
店名のスリー・・・はその目安なのか?
と邪推までしたくなるが、勿論、その価値は折り紙つき。
 
そんな店に、暖を取りに飛び込んでしまったワケだ(^_^;)
 
 
「そう言えば、彼、どうしてます?」
 
「あぁ、最近来てませんか?」
 
「全然顔を見ません」
 
 
特徴ある私を見て、彼も私の友達を思い出したらしい。
と言うか、この店を教えてくれたのは、その友達だから当然か。
 
モルト馬鹿御用達の店では馬鹿談義が盛り上がるのだが、
今宵は寒さに震える連れ合いがいるので、静かな空気が漂ったまま。
 
 
「寒かった・・・。
 胃痙攣を起こしそうになるくらい」
 
「おいおい、穏やかじゃないねぇ」
 
「忙しくて、ちゃんと食べてなかったから・・・」
 
「じゃ、ホットミルクにラムは丁度良いかもね」
 
「うん、ちょっと生き返ってきた」
 
 
酒はつくづくTPOだ。
 
どんなに凄い酒でも美味しくない時もあるし、
ごく普通の酒でも凄く美味しい時もある。
 
そう言えば、「チョーズ・プレイス」ではこんな夜、
VO(カナディアンウィスキー)のお湯割りを飲んだっけ(^_^;)
 
寒さで回らなくなった頭では、数あるホットドリンクを思い出す事さえできなかったが、
そんな夜の一杯目の「ホット・ラム・カウ」は記憶も意識も連れてくる。
 
さて、アベラワーの次は何を飲もうかねぇ・・・(/–)/

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