Home > アーカイブ > 2006-04

2006-04

かけつけ3杯

「いらっしゃいませ」
 
「久しぶりです」
 
「何にしますか?」
 
「ボイラーメーカーを」
 
 
いきなりマスターの顔が引き締まった。
 
 
「今日はラフロイグがカスクしかないですけど」
 
「お願いします」
 
 
ギネスをマグに注ぎ、ショットグラスになみなみとラフロイグを満たす。
 
ビロードの様な泡が少し収まる頃、2つのグラスが目の前に揃った。
 
 
モルトをこぼさないように静かにショットグラスを持ち上げ、
ギネスの泡の中に静かに沈め、指に泡が付きそうなるまで入ったところで、
意を決してリリースする。
 
・・・と、見事! 泡は盛り上がっただけで一滴もこぼれないまま、
ショットグラスだけが静かに底まで沈んだ。
 
ふわっと広がるアイラの香り・・・
舐めてみると、絶妙なブレンドで、ギネスとラフロイグが自己主張をする。
 
 
「やっぱ・・・これだなぁ」
 
「一気にいきますねぇ」
 
「うん、短時間に酔いたい感じだし」
 
「かけつけ3杯ですね」
 
「ショットガンはやらないよ」
 
 
以前この店で「かけつけ3杯」と言うと、ショットガン3杯を意味していた(爆)
 
なかなか飲める店が少ない「ボイラーメーカー」だからこそ飲む意味もあるんだが、
確かに力業で酔う飲み物である事は否めない。
 
殆ど一気飲みに近いスピードでボイラーメーカーを空けると、
マスターがにやりと笑った。
 
 
「ウーゲデール、ありますよ」
 
「いただきます」
 
 
テイスティンググラスにたっぷり注がれたウーゲデールは、
最近のアドベッグとしては文句のつけようが無い良質さを誇る。
 
久々に飲んでみると、妙に固さが取れた優しさだけが感じられるが、
しっかりと強すぎないアイラっぽさが、凄い魅力なのだ・・と再認識させられる。
 
コイツも少し乱暴にストレートでするすると飲むと、
目の前に三角のボトルがすっと置かれた。
 
 
「ソレラですけど、いかがですか?」
 
「フィディックかぁ・・、最近飲んでないねぇ」
 
 
気持ち良くモルトを飲む夜、
心は軽く、気持ちも穏やかになれる。
 
やっぱり飲まないとダメ・・・なんだなぁ・・・自分(/–)/

富士山嶺18年

「今,フェアをやってるんですけど,飲みますか?」
 
「え?」
 
「こちらですが。」
 
「え~? よく手に入ったねぇ」
 
 
バーテンダーが出してくれたのは,
キリンが作るモルト,「富士山嶺18年」(43%)だった。
 
 
「どうなの?」
 
「美味しいです」
 
「安い方は飲んだ事があるけど」
 
「どうですか?」
 
「値段の割には美味いと思ったけど,
 まぁ,国産のウィスキーって感じだったよ」
 
「じゃぁ,こちらは驚くかも知れません」
 
 
そこまで言われれば,飲むでしょ(^_^;)
 
テイスティンググラスに注いでもらった18年は,
加水された43%のモルトだが,足もそこそこ出る良い姿をしていた。
 
まず一口
 
え?
嘘??
 
瓶半分ほどになっていたそれは,すでに有る程度開いている状況ではあるが,
いきなり飲んでみると,おそろしく柔らかい口当たりがある。
 
勿論,注いだばかりではフェノール臭があって,
このトップノートを飛ばさないと辛いのだが,
それを割り引いてもかなりのバランスを見せた。
 
5分放置した後,飲んでみる。
 
柔らかさの中に,若干のバニラ,柑橘系の香り,ほんの少しの焦げた香り・・・
 
15000円という上代が,その出来をアピールしているとは思ったが,
ここまでマトモだとは想像もしていなかった。
 
 
「バーボン樽,バッティングモルトの中にあるかもね。」
 
「一応,ジャパニーズ・オークと聞いています」
 
「ミズナラかい?」
 
「さぁ・・・(^_^;)」
 
 
10分経ってからは,木材からでるような香りが増し,
当初にあったバランスが崩れだす。
 
酸っぱさに似た果実味に近い味わいと,木の個性が立ってきて,
それを味わっているうちに,眉間から上がフワフワと酔いだした。
 
 
「これ,いいかもね。
 でも私の身体には合わない成分がある。」
 
「人気は高いですよ」
 
「うん,売れると思う。
 下手なブランド物よりよっぽど美味いし,
 乱暴にすいすい飲むにはちょうど良いかもね」
 
 
キリンが御殿場で仕込んでいたモルトは,
ただならぬポテンシャルを持っていた。
 
最近の国産ウィスキーには,こういった良いモルトもある・・と
認識はしていたのだが,正直言って驚きと喜びを感じている。
 
ただ,コストが高い。
 
そのコストとパフォーマンスを比べると,
まだまだスコッチには距離があるように思えてならない。
 
むやみに高価にしているのでは無い事もわからないではないが,
そこら辺,どうにか頑張ってもらえないものだろうか?
>大手国産メーカー殿

Home > アーカイブ > 2006-04

検索
フィード
メタ情報

Return to page top