Home > 日記的雑感 > シガーバー

シガーバー

「すいません、シガーをください」

「はい、何にしますか?」

 

ワイシャツ姿の客がバーテンダーと、話している。

店の片隅にあるヒュミドールは、それなりの大きさがあるから、
サイズも種類も期待してよい位に有りそうだ。

 

シガーの置いてあるバーも大分増えたとは言え、
それでもまだ、ユーザー数はマイノリティ域にあると思っている。

メディアなどで取り上げられると一時的にユーザーが増えるが、
そのコストに負けるのか、あまりに少ない情報に楽しみ方を見出せないのか、
結局、本当のユーザーしか残らない・・・ように感じるのだ。

 

「・・・でね、最近勘違い野郎が多くてさ」

「まぁ、君に人気があるって事で、我慢するんですね」

「ハイハイ。
 でもね、さも自分の女みたいな言い方を、
 私の居ない所で私の知り合いにしてほしくないのね。」

「え?、そんな事あるの?? そりゃ、腹が立つよね〜」

「私の居る所で馴れ馴れしくしたり、そんな言い方してくれたら
 その場で否定するしやっつけるんだけど・・・」

「君の前じゃ、そんな風では無い・・と?」

「うん」

「でも、そういうヤツって、
 影では誰の事も、そうやって喋る・・・って事よ」

 

こっちとしては、ヒュミドールにどんなシガーがあるのかが気になっているが、
彼女の話にもそれなりに問題が含まれているので、スルーできそうにない。

 

「本人が居ない所で、その人の良い所を語る人って、
 確かに少ないかもね。」

「そうね。
 大体が悪口だったり、ネタになっちゃうしね。
 でも『そんなダメなヤツだけど、ここは良いんだよね』って語る人なら、
 一応信頼できるかなって思ったりする。」

「いるか〜?そんな奴??」

「いるよ〜
 ・・・・少ないけど」

 

コヒーバやパルタガスなど、魅力的なシガーが目の前に並ぶ。

カウンターしか無いような店だから、
シガーの準備もカウンターでバーテンダーが行うようだ。

 

「この店、シガーも結構あるんだね」

「うん。知らなかった?」

「そんなに来ないし・・・・え!?」

「なに?」

「カットしちゃうんだ・・・」

 

チューブから出したシガーを、
シザー型のカッターでバーテンダーがカットしている。

シガーは、キャップを切るところから楽しむ物だと思っているから、
バーテンダーが切ってしまう事に、違和感を感じた。

 

「カットしてってオーダーなんでしょ」

「そうかなぁ・・・
 勿体ないなぁ・・・」

 

今日はどういうカットで楽しもうか・・と考えるのもシガーの楽しみで、
パンチで穴を開けるか、ナイフでスリットを作るか、シザーでどの位置でカットするか・・・
が、その一本を味わうプレリュードなのに・・・(^_^;)

だが、確かに吸い口のカットは、不慣れだと難しい。

それに、キャップをカットして出す店も無いことは無いので、
そういう店でしかシガーを吸ってない客なのかもしれない。

ただ・・・

バーテンダーの手つきを見ていてちょっと心配になるのは、
なんとなく手慣れていない所作が見えるから、だろう。

 

「誰かに何かをしてあげたいって思う時、
 その人が本当に望む事や、その人の気持ちを考えるって基本でしょ?」

「うん。」

「勘違い野郎って、共通して、自分の為に動いてるのよ。」

「あっ・・と、そこへくるワケね。
 でも、確かに、自己中心的に考えた振る舞いって、
 相手にとっては嬉しくない物だよね。」

「でね、その意識の中には、私って人間が生きてるんじゃなくて、
 私を連れてる自分がカッコイイって考えが見えるから、ムカツクの。」

 

すいません・・・
ティーンエージャーの恋物語ですか?

それとも、ストーカーの分析ですか?

 

「ちょっと違うかも知れないけどさ、
 仕事ができないクセにそれなりの地位についちゃってるヤツって、
 そういう傾向があるよ」

「え? そうなの??」

「対象は女じゃないにしても、
 部下の手柄を自分の物にするわ、わからない事は『やっとけ』って言うわ、
 『こんな地位に居る俺って凄い』みたいな言動吐くわ・・・で」

「あははは
 で、忙しいって言いながら、大した仕事してない?」

「そうそう・・・あ? マジ??」

「何?」

「火点けちゃってる・・・」

 

バーテンダーは、長い軸を持つマッチを擦り、
いきなりシガーに着火を試みる。

マッチの炎を直接シガーに当て、
器用に回しては炎から外すが、すぐまた直火にさらす・・・

オイオイ・・・・
大丈夫かよ・・・(^_^;

 

「シガーって火を点けて出す物なの?」

「いやぁ・・・どうだろう。
 こんなのは初めて見たよ。」

「火が点きにくそうね」

「うん、結構綺麗に着火するのは難しい。」

「じゃ、火を点けてってオーダーなのね」

 

シガーにとって着火は、味を左右する大切な行為。

ラッパーを焦がしたら苦くなるし、
均一に着火しないと片燃えを誘発しかねない。

だからまずは、着火点を綺麗に均一に焦がし、それから一気に着火に持っていくのだが、
この時に吸わないで着火するためにはかなりの経験とワザが必要なのだ。

だが、このバーテンダーは、着火点を炙る事をせず、
いきなり火にさらしてしまう・・・・

そして、吸う事ができないから・・と手で持って振りまわしている(/–)/

 

「バーナー、貸してあげようかな・・・」

「まぁまぁ・・・押さえて、押さえて。
 それは慣れた店でやってください。」

「そうだねぇ」

「火を点ける事までオーダーする客だったら、
 貴方みたいに気にする事も無いでしょ・・・」

 

そりゃ、そうだ。
その通りです。

一番大切な、儀式にも似た、
シガーを吸う楽しみの中の1つと言ってもいいパートを、

他人に委ねるレベルの客なのだから、
無理してバーテンダーとその客達の顔を潰す事も無い(^_^;

でも、シガーファンとしては、気になるワケで・・・

 

「あらら・・・
 ラッパー、真っ黒になっちゃってる・・」

「はいはい。ココで口出すと営業妨害よ?
 それより私の話、聞いてくれるんじゃなかったの??」

「はい、そうでした。申し訳ありません。
 つい趣味の事だと熱くなっちゃうので・・・」

「私より?」

 

藪蛇・・・・でした(/–)/

コメント:2

moyuzo 08-06-12 (木) 20:19

そういう人います 自分のそばにも。
その度に いろんな人がいるよね~~ って
だから ネタも豊富に得られたりもするんすけどね・・・(;^_^A

某若 08-06-12 (木) 22:51

何処も、同じ・・という事ですかねぇ(/–)/

コメントフォーム
Remember personal info

トラックバック:0

このエントリーのトラックバックURL
http://blog.wakao.info/archives/148/trackback
Listed below are links to weblogs that reference
シガーバー from bowjackmoore - 日記的雑感

Home > 日記的雑感 > シガーバー

検索
フィード
メタ情報

Return to page top