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2012-09-11

MOONLIT CLUB

 
「知ってます?ムーンリットクラブが閉店するって」
 
 
え・・・?
 
言葉を奪う、その一言。
 
また、横浜の名店が一つ
消えていくのか?
 
 
「いつまでやってるの?」
 
「たしか今週いっぱい・・・」
 
 
早く言おうよね?
 
と文句を言いたくもなるが、
教えてもらっただけでも幸せな事。
 
マスターの性格から考えれば、
広く閉店のお知らせはしない・・・
という事が、想像できた。
 
 

 
 
 
「久しぶりです」
 
「どうも」
 
「あの・・・
 良からぬ噂を聞いたのですが?」
 
「あ、ご存知で。」 
 
 
何故?
と尋ねそうになったが、堪える。
 
理由を聞いたところで何ができるワケでもないし、
決定が覆るワケでも無い、のだ。
 
 
「何を飲みましょうかね。」
 
「そうですね。
 1974年のトマーチン、カスクですけど45%の物があります。」
 
「じゃ、それを。」
 
 
店には、かなり早い時間なのに、
名残を惜しむ客が数名。
 
思い出話に花が咲いていたが、
そのボトルを開けると、会話が止まる。
 
 
「昨日、このボトルを開けたお客さまがいらっしゃって、
 まだあるなら・・という事で開けてみたら、
 まだ、全然元気でしたので。」
 
 
「トマーチン」はハイランドモルトとして、有名な酒。
 
でも、モルトとしての供給量は少なく、 
特徴的な味わいが際立っているワケでも無いから、人気はそう無い酒でもある。
 
ただそのバランスの良さと、
ハイランドモルトらしい香りや味わいは、
ユルユルと飲むのに適していると思っている。
 
で・・・
 
この74年のカスク物は・・・・
 
 
 
ほぉ・・
 
美味いねぇ(^_^)
 
 
70年代モルトらしい、
フルーティーな香りとカスクならではの長いフィニッシュ。
 
ドスンと来るようなボディは無いのに、
何時までもソコに居続けるような存在感は、
これ一杯で終了しても良い位の重みがあった。
 
 
「マクダフのシェリーバットがありますけど」
 
 
マスターの誘惑は、相変わらず上手だ。
 
付き合いがあったればこそのアプローチだが、
この微妙なやり取りこそが、バーの楽しみの一つ。
 
そして、隠し球のようなモルトが、
いくらでも出てきそうな予感も
バーの魅力の一要素だと言える。
 
 
 

 
 
 
「今週は、一見さま、お断りにしました。
 繋がる『次』ももうございませんので、
 こうしていらっしゃってくれるお客様のために
 席を空けておこうと思いまして。」
 
「何時までですか?」
 
「土曜までです。
 クローズする事を広く伝えないようにしていましたが、
 常連の方達は独特のリレーションがあるようで、
 こうして久しぶりのお越しがある事は、
 とても嬉しい事ですね。」
 
「今週、もう一回は顔を出しますね。」
 
「お待ちしています。」
 
 
銀座の派手な店で修行して、
金を振りまけば何でも受け容れられると勘違いした客を、
持ち前の笑顔で料理してきた彼。
 
決して怒らないような顔をしながら、
しっかり仕返した事があった・・と話してくれた。
 
 
「その客は、チャラチャラした服を着て、
 いかにもな姉ちゃんを連れてカウンターに座ると、
 これ見よがしに外車の鍵をカウンターに放り投げたんですね。」
 
「そんな客が多かったのですか?」
 
「まぁ、イケイケな客が集う店でしたしね。
 でも彼らは、その中でもちょっと・・な感じでした。
 で、格好つけて言うんですね。
 『スクリュードライバー作ってよ。俺がスクリューで彼女がドライバーね。』
 ってね。」
 
「よりによってスクリュードライバーですか。」
 
「えぇ。
 だから私は、
 その兄ちゃんにウォッカのストレートを、
 彼女にはオレンジジュースを出してあげたんです。」
 
 
その後マスターは、店にとても怒られた・・と言っていたが、
自分にはそこまでの喧嘩を客に対してした事は・・・

あ・・
あったか(^_^;
 
 

もし、ムーンリットクラブに通った方で、
名残を惜しみたい人がいらっしゃるなら、
今週土曜までに足を向けては如何でしょうか?
 
 
 

 
MOONLIT CLUB
横浜市中区相生町1-2-1 パレカンナイ3F
045-663-2833
 

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