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2010-12-01

Everyday new problem

以前、取材でイギリスに行った時、
「問題ない(no problem)」と言うのが口癖なコーディネーターが、いた。
 
その言い方には「全然平気だよ〜ん」という感じのニュアンスがあって、
彼がニヤっと笑いながら「no problem!」と言うとスタッフにも笑顔が伝染し、
寒いイギリスの風も和らぐ感じがしたものだった。
  
ただ、その取材はとにかくトラブル続きで、
有り得ない事が次々に起きる毎日だったから、
彼の「no problem!」は耳にタコができるほどよく聞かされる。
 
手配していたパーツが届かない、
オーダーしておいた物とはレベルの違う機材が用意されている、
合流するはずの通訳が何故か強制送還されてしまう・・・
 
もう呆れる程の問題の山。 
 
その中での極めつけは、
「round about」と言われる交差点での交通事故だった。
  
 
「round about」には円形路が設置され信号は無く、
交差点に達した車両は必ず左折して一方通行の円形路に入り、
時計回りに走りながら行きたい方向へ左折して出る・・・
というルールがある。
 
交差点に入る時は右から来る車両を気にしながら左折するだけで、
出る時は注意も要らない合理的な方法なのだが、
事故は正に、有り得ない行為によって引き起こされた。
 
 
我々が交差点に入る時、
ルールに従って右から来る車両が無い事を確認して進入したが、
先に交差点に入っていた車両が、何故か突然バックした。
 
右を確認しながら進入した我々は気付くのが遅れ、
衝突事故となる。
 
 
相手ドライバーに話を聞くと、
曲がる所を間違えたのでバックした・・との事。
 
曲がり損ねたら一回りするのがルールなのに面倒だからバックした・・・
という横着で自分勝手なルール違反が、お互いの時間を大幅に奪い、
取材にも大きな影響を与えた事は、言うまでもない。
 
 
そんな事態にあってもコーディネーターは「no problem!」と元気良く叫んだが、
さすがに取材車にもダメージがあって、スタッフは明るい顔を取り戻せなかった。
 
と、その時つい口から出たのが
「No! Everyday! New problem!」
 
勿論、文法もへったくれも無い駄洒落だが、
非難しているわけじゃなく、何とか笑いを取ろうとしただけ。
 
その必死な気持ちが表情から伝わったのか、
一同、苦笑混じりの大笑いとなった。
 
そして
「起きちゃった事はしょうがないので、今できる最善策を探そうよ」
という声が上がり、動きを始めるキッカケになる。
 
それは
絶望的な状況でも笑う事で何とかなる・・・
と知った貴重な体験だった。
  
 

 
 
今日、新しい職場となる施設の、引き渡しがあった。
 
幾多のトラブルが生まれそうな戦場も、
今はまだ、平穏な空気が流れている。
 
新規事業は、毎日がトラブルで、毎日が勉強で、
反射神経のような判断だけが頼りの航海になるだろう。
  
 
必然的に起きるトラブルは喜んで引き受けるつもりだが、
問題は、いつまで自分の意欲が保てるか・・・だ。
 
そして私の行くべき道は
まさに「round about」に入ったようにも感じている。
 
 
ルールに従い「round about」を回りながら、
行く先を決めて左折するタイミングを計る時期に来た、
という事なのかもしれないね。

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