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2006-03-19

バルヴェニー25年

「ここにある酒ならどれでもテイスティングしていいよ」
 
「本当に?
 かなり高価なモノもあるけど、いいの?」
 
「何の、問題も無し。」
 
「じゃぁ、そのバルヴェニーを」
 
 
ニコッと笑った彼は、惜しげもなくバルヴェニーをテイスティンググラスに注いでくれた。
 
注いだ瞬間から漂う豊かな香りは、普通のバルヴェニーとは明らかに違い、
口に含んだ瞬間からその味わいの深さにやられてしまう。
 
 
「コレ、もちろん有るんだよね?」
 
「あるよ。
 それより他のも、飲まないか?」
 
「じゃあねぇ・・・」
 
 
私はこうして、ロンドンのミルロイズで、
バルヴェニー25年とグレンモレンジ1975・スペシャルエディッション(日本未入荷)を
空港の免税ショップより安い値段で購入した。
 
 
「お探しだったバルヴェニー25年、届いてます。」
 
「手に入ったんだ~」
 
「ちょっと値が張りますが」
 
「あったら取ってって言ったんだから(^_^)」
 
「では、持ってきます。」
 
 
バルヴェニー25年 シングルバレル 46.9%(オフィシャル)
 
バルヴェニーとグレンフィディックが兄弟だ、という事はあまりに有名だが、
同じ仕込み水を使い、同じ形のポットスチルを使って作る2つのモルトは、
何故かそういった事実が信じられないほど違う味わいを持っている。
 
場所の違いは殆ど無く(道を挟んで向かい合わせだ、と聞く)
作り手も同じ会社の人なのに、似て非なるモルトができる事は、ある意味面白い。
 
グレン・フィディックのソレラリザーブと、バルヴェニー15年を比べてみると、
その違い(と言うか、方向性の違い)がわかると思う。
 
フィディックの素直さとは違う方向の、純真な味わいがバルヴェニーにはあって、
その奥行きの広さはバルヴェニーの方が一歩上を行くのだ。
 
そのためよく言われるのが「バルヴェニーはフィディックの吟醸酒」という表現だが、
私にしてみれば、フィディックの方が吟醸のような可憐さがあり、
バルヴェニーの方は本醸造のような強さを感じていたりする。
 
ただ値段は、バルヴェニーの方が遙かに高く、
その数はフィディックとは比べ物にならないほど少ないはずだ。
 
希少性という事から吟醸酒という表現が生まれたのだと思うが、
とにかくフィディック好きの人には間違いなくオススメのモルトだと言っていい。
 
 
「どうします?」
 
「もちろん、開けて。」
 
「いきなり飲みます?」
 
「うん、貴重な70年代モルトだけど、
 飲まないで飾っておく物じゃない。」
 
 
ミルロイズで買ってきた25年は、ロブロイで飲んでしまい、
その後の入荷を待ったのだが、もともと数がある物じゃなかったため入手できていなかった。
 
まぁ、ロンドンで買った時(3年前)で3万円程度した酒だ。
日本で買っても良い価格である事は間違いないし、
正規で買えばサントリー・アライドの事だからかなりの価格になる事は想像できる。
 
で、安く売ってたら、買おう・・とあまり気にしていなかったのだが、
最近、この25年が終売という話が流れると同時に、店にも若干並ぶようになっていたのだ。
 
安売りの店でも2万オーバーの酒だから数は置いてない。
ボトリングがいつになるかによってだが、オフィシャルが出す25年物と言えば、
70年代~80年代前半の貴重な物である事は疑う余地も無い。
 
で、オーダーしたモルトのボトリング・デイトはなんと2000年。
蒸留年は1974年の代物だった。
 
 
コルク栓にかなり近い部分まで詰められたバルヴェニーを
テイスティンググラスに注いでもらう。
 
トクトクトク・・・と音がして、ちょっと勢いのついたバルヴェニーがグラスに落ちると、
その瞬間から香りが立ち上る。
 
注いだ瞬間からかなりのポテンシャルを発揮できる酒だと記憶していたから、
間髪入れずに5回ほどグラスの中でモルトを回してから、少しだけ口に含んでみた。
 
 
うわ・・・・
 
 
 
声を失った(^_^;)
 
 
口の中に広がるのは、独特な豊かなバニラ香。
 
起きたての尖ったアルコール臭はあっても、
それをマスクするほどの甘さ。
 
その後にどーんと襲ってくる余韻の深く、長い事。
 
 
「・・・・こんなに、美味かったっけ・・・」
 
「まだ、開けたばかりですけど、良いですか?」
 
「飲んでみなよ」
 
 
珍しいボトルが入ると、バーテンダーには必ず飲ませるようにしている。
 
最初の頃は、いわゆるススメ好きな酔っ払いの戯れ事と思っていた彼らも、
最近は、あまりにレアな物ばかり揃った関係で、それを楽しみにしていたりする(^_^;)
 
本来カウンターの中では飲まない(そういうルールがある店)彼も、
テイスティンググラスに注いだモルトをしゃがんで一口飲んだ。
 
 
「すごい・・・ですね。
 甘さ・・と、バニラ香・・・」
 
「前に飲んだ時より、鮮烈に感じるよ」
 
「開けたばかりですよ?
 これは驚きました。」
 
「俺もだ(^_^;)」
 
 
正直に言います。
 
今、販売しているバルヴェニー25年を見つけたら、
間違いなく「買い」です。
 
シングルバレルの15年も勿論美味しくてレアなモルトですが、
その差は大きすぎて同じ名前をつけてはいけない・・と思うほどです。
 
 
さぁ・・てと、
あるウチに買っておこう・・・かな(/–)/

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