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一杯のかけ蕎麦

 「かけ蕎麦ください」

 

 「珍しいですね、

  いつもはもりなのに。」

 

 「寒いからね」

 

 「お酒?」

 

 「えぇ、燗してね、一合でいいです。

  そうだ、板わさもね。」

 

 「はい〜」

 

 

 行きつけの蕎麦屋で素っ気ないけど

 暖かくなるブランチを取る。

 

 でも・・

 いつもと違うのは、蕎麦が「かけ」だったという事。

 

 よく行く店なのに、

 いちどもかけそばを食べた事がなく、

 暖かい蕎麦は邪道だと思っても、今日は外へ出たりする可能性大なので、

 まずは勢いをつけたかった。

 

 〆張鶴を板ワサでやっつけているうちに出てくる「かけ」

 

 ど〜れどれ・・と啜ってみると、

 

 え?

 これ、美味いじゃん(^_^)

 

 蕎麦、伸びてないよ・・・

 

 

 いや、驚いた。

 新蕎麦で打っている蕎麦だから・・・というだけではなく、

 蕎麦の香りと柔らかい中にある蕎麦の腰があって、妙に美味いのだ。

 

 あ・・・

 これって、汁も美味いんだ。

 

 いつもは何か具が乗っていて、

 その具の味が優っていて気付かなかったのだが、

 何も具が無いと、出汁の旨味がよくわかる。

 

 蕎麦湯をもらって、かけ汁に足して飲んでみると、

 これがまた美味くって・・・

 

 ちゃんとした蕎麦屋で食べる「かけ」が

 こんなに美味いって、知らなかった・・・(^_^;)

 

 

 「今夜が勝負?」

 

 「そうですね。

  今日は蕎麦屋にとって戦争です。

  こんな早い時間はまだ全然だけど、

  夕方は店閉めて、蕎麦も生蕎麦だけ売るんですよ」

 

 「あ、そうだったけ?

  夜来なくて良かった〜」

 

 「年越し蕎麦、お持ちになります?」

 

 「あ、いや、今年も多分、

  何時になるかわからないし・・・」

 

 「あらあら」

 

 

 華美に飾る事が当たり前な時代に、

 何も飾らない物の良さを知る。

 

 それも大晦日に。

 

 変わるべき物は自然な形に変化していくが、

 本物は変わらずに、ただただ磨かれていく。

 

 そして磨かれたソレは、何にも揺るがない力を持って、

 誰にでもわかる魅力を持って、そのままでいるだろう。

 

 今年の自分は、

 自分らしく、自分に嘘をつかずに生きてきたろうか?

 

 一杯のかけそばを啜りながら、

 そんな事を考えていた午後、

 空は気持ち良く晴れていた。

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