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フレンチナックル

「このモルトでなんか作ってくれない?」
 
「これは・・・難問ですね。
 でも、ちょっと考えますね。」
 
 
マッカラン1977(ダグラスレイン Old&rare)
を使ったカクテルを所望した。
 
勿論、酷いオーダーだって事はわかっているけど、
マッカラン飲みとしては魅力に薄いこのシリーズ。
 
ならば上質なモルト故に表現できる妙を味わいたい・・・
と思ってしまったのだ。
 
 
「お待たせしました」
 
「え?」
 
「かなりのクセ玉ですが・・・」
 
 
クセ玉なんてもんじゃない。
 
目の前に出された物はおよそカクテルとはほど遠い格好をしていた。
 
 
「洋なしのシャーベットです。
 手持ちのシャーベットではアプリコットしか無かったので
 レストランに走って持ってきました。
 と言う事で、本日コレ、ラストワンです。」
 
 
そう・・・
 
洋なしのシャーベットにモルトをかけたシンプルなカクテル。
 
名前は・・・無い(^_^;
 
 
どんな味がするんだ?・・・
と味わってみる。
 
洋なしの出しゃばり過ぎない甘さに、
マッカランの柔らかく穏やかな味わいがマッチする。
 
そしてより際だつアルコール・・・・
 
美味い(^_^)
 
 
「これ・・絶妙かも」
 
「アプリコットじゃ甘過ぎちゃうし、
 レモンじゃ強すぎますので。」
 
「名前は?」
 
「・・・ありません」
 
「なんかさ、剛速球が来ると思ったら、
 いきなり子供騙しのようなフォームで繰り出されるナックルボールのようだ。」
 
「すいません、クセ玉で。」
 
「子供騙しだと思ったら、そのまま大人も騙されるような美味しさだねぇ・・・」
 
 
バーテンダーは応えずにニコッと笑った。
 
 
毎度、彼にはやられている。
 
想像もつかない取り合わせの中から、
予想外の美味しさを味わされてばかり・・・だが、
今回の発想には正直、驚かされた。
 
誰が、シャーベットとプレミアムモルトの組合せを
考えつくのだろう・・・・
 
相当のモルト馬鹿が頼むアクセントには
並の素材では対応しにくい・・という考えだと思うが、
その発想が並じゃない。
 
だからこそ、難問をぶつけたくなるのだが、
毎回想像以上の味を提案されて、納得させられてしまう。
 
この引出の多さが、物作りを担当する人の魅力となるのだが、
自分自身はどうだろう・・・と跳ね返ってくる考えに、襟を正す気分にさせられる。
 
たかがカクテル。
されどカクテル・・・か(/–)/

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