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ロングモーン1973

「第2弾、来ました」
 
「早いね」
 
「無くなりそう・・・という話があったので、
 押さえちゃいました。」
 
「ありがとう。
 じゃ、早速・・・・」
 
 
ここのところ、ボトラーズから70年代のモルトが多く
リリースされているらしい。
 
今回の調査リストにはそんなモルトが複数あって、有ったら欲しい・・・
というオーダーには確実に応えられると、購買部から返事はあったのだが、
それにしてもどこにあったんだ?と言いたくなるほどレアな物が揃いそうな気配がしている。
 
 
ロングモーン30年(1973)60.1% キングスバリー社製
 
 
「実はこのボトル、凄くレアなんですよ」
 
「モルトが?」
 
「それもそうなんですけど・・・・」
 
 
そう言ってバーテンダーがラベルを指さした。
 
この手のボトルは、何本生産したかを示す数字が印刷されたり手書きで入っている事が多く、
その総生産数で樽何本分なのかを想像したりできるのが面白いのだが、
このボトルに記載されている数字は、確かに珍しい状態であった。
 
 
「へぇ・・・・こんな事ってあるんだ」
 
「私も、初めて見ました」
 
 
ラベルには総生産数として202と手書きで書いてあるのだが、
そのうちの何本目か・・・という記載にも同じ数字が書いてある。
 
 
「202/202・・・・って」
 
「長年売っていますが、1番と末番は見た事がなかったんですよ」
 
「俺もだ」
 
「なんか、これだけでも嬉しくなっちゃうね。
 味にはあまりかわりない・・と思うけど」
 
 
こんな事でもちょっと楽しくなるのが、馬鹿ならでは。
 
でも、このモルトはそんな事なんてどうでも良い程の個性を持っていた。
 
 
色は恐ろしく濃い。
 
シェリー樽での熟成とあるが、色付けたんじゃないの?
と疑いたくなるほどの濃さがある。
 
早速・・・と飲んでみる。
 
口開けは、香りも何もしないような熟睡中のモルトであったが
味は最初から想像以上にしっかりとしていた。
 
60.1%というアルコール濃度が、その個性を強く押し出しているのがよくわかる。
 
時間をかけてその変化を味わうと、15分くらいから生ゴムのような香りが立ちはじめ、
その中にシェリー樽らしい甘さがどんどん厚くなっていく感じで変化を続ける。
 
ロングモーンというモルトは、知名度の低さから人気があまり無いモルトだが、
長期熟成に耐えるロングモーンはスタンダードのマッカランなんて及びもつかない美味さだと思っている。
 
それを裏付けるようにこのモルトはマッカラン顔負けの味わいを見せた。
 
2週間前に入れた1976マッカランを物差しとして並べながら楽しんでみると、
ロングモーンの方が明らかに複雑かつ豊かなモルトである事がわかった。
 
マッカランはあくまでマッカラン。
ロングモーンは、ブラインドで出されて「オールドマッカラン」と言われたら
そうかも知れない・・と思うくらい似ていながら、
その中にバニラの香りと極薄く柑橘系の香りを持ちつつ、
甘さは明らかにマッカランとは違う質の物を主張している。
 
そして・・・・
ロングモーンの方が、美味しいと思えてしまう。
 
市販価格で見ると5000~7000円ほどの差があるこの2本、
レアさを大事にするならマッカランだが、味が大事と思う人ならロングモーンだと思った。
 
勿論、1976マッカランが不味いわけじゃない。
絶対大事に飲もう・・と心に誓うほどの美味さだ。
 
 
しかし・・・・
 
たぶんこの波が最後のビッグウェーブだとは思うが、
自分自身が思いっきりお馬鹿だと感じるほど、
買いまくり状態に陥っている・・・(/–)/

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