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2018-03-14

空不異色

「たぶん、その言葉が欲しいんですよ」
 

彼はそう、呟いた。
 
どちらかと言えば人見知り。
笑顔を作る事も苦手。
 
だけど仕事のスイッチが入れば
どうにかできる。
 
そんな性格の話を挟みながら、
親との確執の話に話題が流れた頃、
彼は仕事とは別に何かの言葉を求めていることを
言外に匂わせた。
 

なるほど
この人は答えを求めて彷徨い
未だ答えを得る事ができないまま
生きているのだね。
 
私自身の経験を少しだけ話したあと、
「絶対謝らなかった人が『ごめんね』と事も無げに吐いた」
と伝えた時、彼の中に1つの行先案内板が立ったように感じた。
 
 

 
 
「まだ、答えは出ないんですけど。
 きっと欲しい言葉を聞ける事も無いと思いますけど。」
 
 
求める物が何かわかるだけでも、良いと思う。
  
私自身はそれがわからなかったし、
受け取って初めてその意味や重さを知っだけど、
相手にとってはあまりに軽い、という事も見えている。
 
その軽さ故に、立ち止まってしまった恨みをはあっても、
明日へ向けて軽やかに歩けそうな気分は生まれたのだ。
 
そしてそれが、
乗り越えていく力に変化する事も、予想できる。
 
 
そんな会話を、初めて会った人と交わす。
 
その奇跡的な時間がある事は、
表現を続けてきた意味を裏付ける。
 
   
答え合わせは、大事なこと。
それがお互いにできる関係は希有なこと。
 
ふと、そんな瞬間があったことを思い出したけど、
だから今も、構えもなく引き出しから出す事ができるのだろう。
 
これも役目の一つなら、
新しい役を担うだろう厄年も捨てたもんじゃないね。

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