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2011-10-10

不眠症の薬

 
  どうにも寝れない・・と
  夜通し営業するバーへ行く。
 
 
  既に終電が終わった時刻。
  駆け引きを終えたカップルは、店から消えていた。
 
  静けさが漂う店内で独り
  酔いの世界に浸る事にする。
 
 
  バーテンダーはこんな時、
  こぼれる独り言に反応しない。
 
  低めのボリュームで流れるジャズが
  きっと眠気を誘ってくれるはず・・と
  ハードリカーを流し込む。
 
 
   日々、どうにか生きているよ。
 
   贅沢では無いけど、
   食べる事に困らない程度の暮しは
   自らの力で手に入れているからね。
 
   でも
   しょうがないよ。
 
   これは病気なんだ。
 
   眠れないのは孤独だからではなくて
   孤独だから考えが悪い方へ向かうだけの事。
 
   わかった顔をされるより孤独でいた方が楽だ
   と思う自分には
   そこに寄り添う寂しさを受け入れて生きるクセが
   染みついているのさ。
 
 
 
  外は雨。
  傘は無い。 
 
  ショットガンを3杯キメても冴えまくる頭には
  カスクストレングスのアイラモルトとロンドン・ジンの1対1
  「ロング・アンド・ワインディングロード」を流し込むしかないのだろうか。
 
 
   「口を開けちゃったシャンパンがあるんで
    飲みませんか?」
 
   「え? シャンパン?」
 
   「えぇ。
    マムですけど。」
 
   「珍しいね。」
 
   「お客様に頼まれていて『シャンパンカクテル』を作ったんですが、
    ウチじゃぁ、グラスシャンパンにしても売れないんで、振る舞っちゃいます。」
 
   「シャンパンカクテルってカサブランカの?」
 
   「えぇ。
    定番の口説き用カクテルですけど、楽しいですよ。」
 
   「じゃぁ、久々に『シャンパンカクテル」飲もうかな。」
 
 
 
  バーには酒という相手がいて
  バーテンダーは今宵の相手として紹介してくれるものだった。
 
 
  ハンフリー・ボガートは「君の瞳に乾杯」と言ったが、
  私は何と言おう・・・かな。
 

 

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