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2006-11-01

ロイヤルマイルのマッカラン

「何を飲まれますか?」
 
「そこの棚に、魅力的な物がありますね。
 ブラックアダーのロウカスクシリーズが。」
 
「モルトがお好きでしたら、こんなのはいかがでしょう?」
 
 
え・・・?
ロイヤルマイルじゃん・・・
 
しかもマッカラン1974だ(^_^;)
 
 
「え・・・、これは珍しいですね。
 よく有ったなぁ・・・」
 
「ご存知ですか?」
 
「ご存知も何も、これの68年マッカランを飲んで、
 マッカランにはまったんだから」
 
「まだ倉庫には数本残っていますよ」
 
「へぇ・・・有る所には有るんだねぇ」
 
 
イベントに参加した後、友人とフラッと寄ったバーで、
奇跡的な再会をした「ロイヤルマイル」
 
その名の通り、エジンバラのロイヤルマイルにあるこの酒屋は、
上質なモルトを樽買いして瓶詰めで売ってくれる知る人ぞ知るボトラーだ。
 
で、このボトラーの酒は出会ったら必ず飲むようにしているのだが、
初めての店ではコストがわからない。
 
 
「これはショットいくらですか?」
 
「3500円です。」
 
 
やっぱり・・・高い(^_^;)
 
 
「ハーフでいただいてよろしいですか?」
 
「はい、もちろん」
 
「しかし・・・よくあったなぁ・・」
 
「そんなに美味しかったですか?」
 
「そのマッカランは今でも私の中では一番美味いマッカランですが、
 その後、1937年のマッカランを5万で買った事があって・・・」
 
 
それにしてもいきなりショット3500円のレアモルトを持ってくるとは、
結構なケンカ腰ではある(^_^;)
 
 
「酒は注ぎ方で味が凄く変わるんですよ」
 
「ワインもモルトも変化を楽しむものですから、
 グラスの相性も大事ですね。」
 
「スニフター3種類ありますが?」
 
「その小さいのはいつも私が使ってるやつなので、そちらを・・・」
 
 
これが彼に火をつけたのかも知れない。
 
滅多に見ないそのテイスティンググラスは、
元町のタカラダで見つけたシェリー用のグラスで、
繊細な薄さと大きさが心地よい飲み口を約束する。
 
そんなグラスを日頃使っている・・・と言ってしまったワケだ(^_^;)
 
 
「こちらのニッカの限定品のカスクはお飲みになった事はありますか?」
 
「あります。」
 
「え?」
 
「青山にニッカ直営のウィスキーしか置いてないバーがあって、
 そこで様々なカスクを頂きました。
 それはもう・・・今のマッカランなんて逃げ出すような美味しさで・・」
 
「問題は注ぎ方なんですよ。
 上手に注がないと、おいしくならないんです。」
 
「そうでしょうね。
 でもそちらはブレンダーの方が来たりしている店ですし・・・」
 
 
そんな彼は、モルトをグラスの真ん中に泡立たない強さで
すっと注いでみせたが、オールドモルトが最初の注ぎ方だけで開くワケはない。
 
もし彼が「そのまま30分置いておいて・・」と言ったらもう少し優しくなれたろうが、
22年も寝ていたモルトは案の定ガッチリ眠り込み、
しかもトップノートは残念ながら最初から抜け気味の状態でしかなかった。
 
おそらく、このレアなモルトの価値と価格のバランスが解らない客は
この酒をワザワザ飲みはしないだろう。
 
つまり、口を開けてからかなりの時間が経っている事は容易に想像できたし、
事実瓶内熟成は劣化の方向へと進行しているのは明らかだった。
 
それでも・・・このマッカランは凄い。
 
豊で嫌味のないシェリー香は健在で、
カスクストレングスを感じさせない穏やかなアルコールとエステルを感じる。
 
 
「美味いなぁ・・・」
 
「いいでしょう?」
 
「こうなるとチェイサーにシェリーが欲しくなるね」
 
「・・・・この後はどうしましょう?
 一番美味いモルトを飲まれちゃったので・・・
 思いっきり方向を変えて山崎・・とか?」
 
「ベネディクティン、あります?」
 
「・・・ございます。」
 
「カットレモンをつけてストレートでください」
 
 
バーテンダーは思いっきり悩んでいた。
 
シェリー樽で仕込んだモルトをチェイサーはシェリー指定で飲むような客は
そうそうこの店では無いのだろう。
 
まして、オールドモルトの後に方向転換としてリキュールのストレートだ。
そして彼は、次の酒を選ぶ事を放棄した。
 
 
「ケンカ売ってる?」
 
「売ってる・・・ほどじゃないけど、
 それなりに。」
 
「サントリーの看板が出てたからマトモな酒無いと思ったけど、
 結構当たりだったね」
 
「うん。 こうなるとココで落ち着きたくなっちゃうね。
 それより、彼が注いだ竹鶴は味が変わってた?」
 
「・・・・」
 
 
そうですか(^_^;)
 
カラカラカラ・・・・
とシェーカーの音がする。
 
氷のぶつからない軽やかな音だが、
バーテンを見て驚いた。
 
なんと彼は、片手で手首を中心に捻りながらシェーカーを振っている。
しかも腕は目一杯伸びて妙なボディーアクション付き・・・なのだ。
 
 
「すいません!ブルックリン、ください」
 
「はい」
 
「今更カクテル?」
 
「あのシェークを見たら、ステアも見たくなった・・・」
 
 
ステアは・・・・
普通だった(爆)

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