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ダメ押し

どうやらまた
横浜の古き良き時代のレストランが
閉店したようだ。
  
以前は、
元町のメインストリートに面した場所で
船に使う丸い窓がついた重厚な木の扉が迎えてくれる
一見さんお断りな空気をまとった店だった。
 
20代の頃、かなり背伸びをして
その店に入った事があった。
 
門構えに比べれば穏やかな空気があったけど
店内はやっぱり重厚な雰囲気に満ちて
小僧としては、実に居心地が悪かった事を、思い出す。
 
ただ、その店のシチューは、
これが本物のビーフシチューだと主張していた。
 
そしてそれは、私の中の「味の物差し」の一つとして
しっかりと記憶に刻まれてしまった。
 
 
そんな店がいつの間にか、表通りから姿を消したのも
かなり前の事。
 
当時の私は、その店は閉店してしまったのだろうと
勝手に決めつけてがっかりしていたが、
探してみると元町の裏の方に移っている事わかった。
 
どこかで安堵しながらも、
住所を頼りに探しても見つからない。
 
でも、その時は
まだまだあの店には追いついていないと
感じていた。
 
だから
あの料理に相応しい人間になった頃に行けば良い、
と思って、店を探す事をやめる事にした。
 
 
そして・・・
 
ある時、その店を見つけてしまう。
 
昔はベネトンが入ってた建物の二階に
その店は、昔ながらのロゴで店名を書いた看板を出していて
こんな場所にあったのか・・・と、少なからず驚かされた事は
つい最近の事だったりする。
 
で・・・
ある時、ふらっと入ってみる事にした。
 
2階の入口に向かう階段の壁には簡単なメニューがあって
シチューとハンバーグが食べられる事がうかがえ、
そのコストも馬鹿高い物ではない事も、理解できた。
 
入口を開けると、店内の一つのテーブルに家族連れがいるだけで
あとの席は全部空いていた。
 
シェフが料理を出していて
アテンドスタッフがいないように見えた。
 
だからちょっと、そのサーブが終わるのを待とうと佇んでいると
そのシェフが気付いて、こちらをゆっくり見てから
おもむろにこう言った。
 
 
「ご予約は?」
 
 
え?
これだけガラガラなのに
予約が必要??
 
  
その日は休日だったので、
ちょっとラフな格好はしていた。
 
パイソンのブーツに黒ジーンズ、
革ジャンというスタイルだが
安っぽく、汚らしくしているワケではない。
 
だが、この店には似合わないと判定されたのだろうか。
 
 
「生憎と、席がございません。」
 
 
と言うシェフの、
何とも言えない視線が少しだけ腹立たしく感じられたが、
一人きりで店を切り盛りしていくには予約が無いと、
段取りにも問題があるのだろう。
  
ここは潔く諦め、次は予約をして、
ちゃんとドレスコードも尋ねてから訪れてみよう、と
誓って店を後にした。
 
 
が、しかし、やっぱり
その店に足が向く事は無かった。
 
それは多分どこかで
そこまでの店では無いと
自分でも思っていたのかも知れない。
 
メニューのコストを見れば
どの位の料理を出すのかは想像できてしまう。
 
シェフが一人きりでやってる店にしては
店内が広すぎる。
 
そしてその後、何度か向かいの焼肉屋から見えた記憶では
いつも客は殆ど入っていない状態である事を、認識していたからだ。
 
  
昨日、通院する関係で元町に訪れて、
先輩に勧められた店で食事をした後その店を覗いてみた。
 
そこには
テナント募集の札が、かかっていた。
 
シェフの年齢問題か、仕事上の問題か、
もっと大事な別の問題があったのか、はわからない。
 
ただ、
売られた喧嘩を買わずにいたような気分は
結局置き去りとなった。
  
 
6616Dc
 
 
悔いを残したのは
自分のせいだ。
 
それも自分勝手な悔いであって
相手にとっては全然関係無い事なのだ。
 
だからこれからは、
そんな悔いを残さないように、
人生の「ダメ押し」をしていくべきなのだろう・・ね。

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